きたない心をキミにあげる。


それは直径10センチくらいの円状で。


まわりにめり込まれたようなヒビが入っていて、壁紙にも亀裂が入っている。



これ、完全に殴った跡だよね。壁を。何度も。



その亀裂に指で触れる。


嫌な汗が吹き出しそうになった。



まさかお兄ちゃんがこんなことするわけがない。



だって私はお兄ちゃんが感情的になった姿を見たことがない。


いつも優しいし、お母さんとも上手くやっていた。



頭ではそう思っていても、得体の知れない恐怖を感じてしまった。



私はお兄ちゃんのことをどこまで知っていたの?



いや、お兄ちゃんはもういないんだ。


今さら何を怖がっているんだ?



部屋の中を見渡す。


視界に入ったのは、閉じられたままのパソコン。



電源は切られたまま。起動することは二度とないはず。



大きく深呼吸をしてから、

私はもう一度カレンダーを同じ位置に張り直した。



疲れたし、今日はここまでにしよう。






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