きたない心をキミにあげる。
圭太は私のテストの点数を見て、深いため息をついた。
お兄ちゃんほどではないけど、それなりに勉強はできるらしい。
「これ分からないのヤバいって。中学でやる内容じゃん」
「うちの高校、バカな私立だししょーがないよ」
「ちなみに順位、どれくらい?」
「下から片手で数えられるよ」
「まじ? あのさ、バイトばかりじゃなくてもっと勉強しなよ」
「うるさいな。とりあえず解き方教えて」
あれ。立場が逆になっている。
いつもは私が圭太をからかっているのに。
それがちょっと面白かった。
シャーペンを握る、骨ばった手が私のプリントの上を走る。
指細いし、手も結構おっきいな。
お兄ちゃんと同じくらい?
まあお兄ちゃんとは違って、ゲームのコントローラーばっかり握ってきたんだろうけど。
「ちょっと、愛美。聞いてる?」
「はいはい。この問題でしょ? うーん分かんない」
「まじか……」
圭太はあきれた顔で、シャーペンを持ったままの手で、ちょっと伸びた前髪を斜めに流した。
ギプスが取れ、右足にはサポーターみたいなものが巻かれている。
リハビリのためか、時々伸ばしたり曲げたりを繰り返していた。
「あー疲れたー。私、そろそろ買い物行ってくるよ」
「は? 全然進んでないじゃん」
「また教えてもらいに来るから。早くご飯作らないとお母さん帰ってきちゃうでしょ」
私はカバンを手にして、玄関へと向かった。
「あ、俺も行くって」
ゆっくりと不規則な足音を立て、圭太も一緒に来てくれた。