きたない心をキミにあげる。
夜7時半。真っ暗な道を2人で進む。
圭太の松葉杖は一本だけになっていた。
左脇に松葉杖をかかえ、重心を左側によせて上手く歩いている。
クロックスを履いた右足は、ほとんど宙に浮かしたまま。
「まだ松葉杖ないと歩けない?」
「うん。右足もだいぶ地面つけれるようになったけど、ギプス取ってからむくんで痛い」
「へー。リハビリ大変?」
「すっごく大変。体が歩き方忘れちゃった感じ」
ぜーぜーと息切れをしながら圭太は答える。
冬なのに上はパーカーだけで暑くなるらしい。
途中、車通りの多い交差点にさしかかった。
歩行者信号が青になる。
圭太を見上げると、彼も私に視線をちらりと寄せた。
――青でも車、突っ込んでくるかもしれないじゃん。
悲しい声でそう言い、私を無理やり止めようとしたことを思い出した。
まだ青信号の横断歩道に恐怖を感じているのだろうか。