きたない心をキミにあげる。
メールも送信、受信ボックスともに全て空になっている。
お気に入りにも、検索サイトやメジャーな動画サイト、有名作家のブログなど、普通なものしか入っていない。
カチ、カチ、とマウスでフォルダをクリックしていく。
流行りの音楽、青空の写真、高校の行事関係や、情報の授業で使ったらしいファイル。
ふぅ、と一息おく。
死んだお兄ちゃんの形跡をたどったところで何になるんだ。
だけど、お兄ちゃんのことが、よく分からない。
部屋を片付けて初めて知ったことは、お兄ちゃんは意外といろんな漫画や小説を読んでいたこと。
だから圭太とも気が合ったのかな。
あと、壁にあるひっかき傷や大きな穴。
この正体が分からなくて、私は今、必死になって何かを探っている。
スマホは画面が割れた状態で戻ってきたから、残された手がかりはこのパソコンだけだった。
ま、パソコンはネット見る時か、音楽聞く時くらいしか使わないか。
『文化祭準備』と書かれたフォルダを探る。
保存されているのは、お知らせ文書や役割分担表。
去年は、クラス委員をやっていたらしいから、いろいろ仕事してたんだな。えらいな。
めぼしいファイルは見つからなかった。
履歴を消すくらいだし、パソコンには何も手がかりはさそうだ。
とりあえずシャットダウンしようと思ったが。
手を滑らせてしまい、間違えて英語名のフォルダをクリックしてしまった。
やばい、コンピュータのプログラム関係のやつかな。
しかし、英語のファイル名が並ぶ中、『参照.txt』と書かれたアイコンが目に入った。
吸い寄せられるように手が動いてしまう。
――え!?
私は驚いてはっと息をのんだ。