吾輩はネコである


自転車に跨ぎ直し、ペダルを強く踏む。人がいない方へ、静かな方へと走りながら、ゴチャゴチャした脳内を整理する。


「私、どこに行こうとしてたんだっけ?」


制服を着て、自転車のカゴにはスクールバッグが入っている。ということは、登校中だったと見ていいだろう。

オーケー。これはクリア。


「学校、どこだっけ?」


どうしよう、思い出せない。もしかして、さっき見えていた学校が、私の通っている所なんだろうか。

同じ制服の人達は皆、そっちに向かってたから、たぶん合ってるはず。


うん、これも、ギリギリクリア。


「学校の、名前は?」


あーっ、ダメだ。何にも思い出せない。中学校だよね? うん、確か、中学生だ。それはまだ覚えてる。


「今、何月?」


マフラー巻いてるし、鼻が冷たいし、冬だってことは確か。
でも、正確なことは何も分からない、覚えてない。


「家は、どこ?」


分からない、思い出せない、両親はいた? 兄妹はいた? ペットはいた? 家は、どこ?





「私は――――だれ!?」





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