カルマノオト
無意識に目が行くのはギターヴォーカルの手元。


そういえばあの日も、彼はこうやってギターを弾きながら歌っていた。




「ちょっと、大丈夫だった!?」




パフォーマンスのため距離を取っていた奏美が近付き、私の腕を小突きながら心配そうに顔を覗き込む。




「あ、うん……。」




そう返答したものの、本当は全然平気じゃない。


楽しみにしていた彼との再会が、まさかこんな形で訪れるなんて。




あの行動は私の事を覚えていなかったからできたものだろう。


知人だとわかっていれば、あんなこっ恥ずかしい真似できる訳がない。




―――やっぱり、忘れちゃったんだ。
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