眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「歳にぃ、なにかあったのか?」

「だって、夏さんの買い物、女並みに長いんだよ!
あーでもないこーでもないって悩んで、店行ったり来たりして。
最終的に買わなかったり!
付き合わされてるこっちの身にもなってくれよ!」

「あー……」

……確かに。
夏生ってそういうのの決断力、ないんだよねー。
大事なこと決めるときは、迷いなくすぱっと決めるくせに。

「でも勇は、いつも付き合ってくれるよ……」

「あれは兄さんが、『どっちかに決めろ!』って提示するから早いんだよ…
…。
俺も遠慮なく、そうすればよかった」

「……ごめん。歳にぃ。
夏生が迷惑かけて」

「ゆずちゃんがあやまることじゃないから。
全部夏さんが悪い」

「ゆずちゃーん。歳がいじめるよー」

「ほらほら、泣きながら運転したら危ないでしょ。
泣かないの」

後ろの真ん中に座ってるから、夏生の泣き顔がよく見える。
というか、この中で一番年上なんだから、もっとしっかりして欲しい。
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