眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「だから、なつにぃが嫌ってわけじゃなくて……」

「なら僕と、結婚、しよ?」

ふふっ。
なーんにも心配いらないよ。

そんな顔でなつにぃは笑ってるけど……私には心配事しか、ない。


——そもそもの発端は。
十日前に遡る。

「ゆずちゃん、気、落とさないでね」

「……うん。
ありがとう、なつにぃ」

おばあちゃんが死んだ。
八十二歳だったから、そこそこ長生きはできたんだと思う。

私が小学校に上がるより先に両親が死んでから、ずっとおばあちゃんとふたり
暮らしだった。

中学に上がる頃から、なんとなくこんな日を覚悟しとかなきゃいけないんだ、
って思ってた。

思ってたけど、別れはあっけなくて、現実感がまるでない。

風邪をひいて、年が年だけに回復に時間がかかってると思ってた。
その日、朝、様子を見に行くと、もう息をしてなくて。
< 4 / 613 >

この作品をシェア

pagetop