眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「そうだね」

笑ってみたら、夏生も笑ってくれた。

……どっちも、無理してる笑顔。

それでも努めて明るく振る舞ってごはんを食べる。
もう、学校の話題は出さない。


夏生がお風呂に入ってるあいだ、自分の部屋で携帯片手に考えてた。

……あの、はがきの番号にかけてみようか、って。

もう夏生が悩んでるのを見てるのは嫌だ。
無理してる笑顔も見たくない。
夏生にはいつも、脳天気にゆるーく笑ってて欲しい。

番号打って、消して。
また打って、消して。

知らない人に電話をかけるのは初めてだ。

登録してある人以外との通話は禁止されている。

はがきに続き、決まりを破ることには抵抗があったけど、でも、もう夏生に苦
しんで欲しくない。

番号を打ち込んで、通話ボタンを押す。

プルルル。

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