眼鏡とハンバーグと指環と制服と
私のため、だったんだろうけど、運ばれてきたのは苺のショートケーキで固ま
った。

「そんなに緊張なさらなくても、とって食ったりしませんよ。
ああ、月原さんが復職する方法として、あなたとの肉体関係を想像されている
んでしたら、とんだ勘違いです」

「……なら」

「私、芝浦会長の秘書だと申し上げたと思います。
芝浦グループ、ご存じですよね」

「……はい」

……芝浦グループは、医薬品製造の会社を核とする、日本でも屈指のメディカ
ルグループだ。
本社は確か、東京のはず。
なんでそんなところの、会長さんの秘書がわざわざ私に?

「あなたは会長の孫に当たります」

「え……」

……意味が、わからない。

おばあちゃんは普通の人だった。
私が生まれたときにはすでに死んでたおじいちゃんも、サラリーマンだったっ
て聞いてる。
お母さんは給食のおばちゃんで、お父さんは近くの薬局の薬剤師。
どこにも接点が……って、お父さん?

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