眼鏡とハンバーグと指環と制服と
夏生はちょっと心配そうだけど、悟られるわけにはいかない。
なるべく自然になるように注意して笑顔を作ると、なにもいわなくなった。


晩ごはんは夏生の大好きな、私の作ったハンバーグ。

もしかしたら、これで最後かもしれない。

夏生はいつものように、嬉しそうに食べてる。

その顔見てたら泣きたくなった。

晩ごはんが終わると、自分の部屋で勉強。

片付けは春から夏生がしてくれるようになってたし、特にいまはすることない
から、って。

参考書を広げたものの、なにも手につかない。

お風呂に入って、夏生の部屋に行く。
夏生は交代でお風呂に入ってる。

テーブルの上には転職雑誌。
ぱらぱらめくってみたら、塾の講師募集の頁ばかり折ってあった。

そっと、真っ暗になってるパソコンのマウスを動かして出てきたのは、高校の
教員募集情報のホームページ。

……嘘つき夏生。
こんなに未練たらたらなのに、私のためだって無理して。
そんなことされたって、全然嬉しくないよ。
< 475 / 613 >

この作品をシェア

pagetop