眼鏡とハンバーグと指環と制服と
まるで眠ってるみたいな穏やかな顔で、最初、死んでるなんてわからなかっ
た。

どうしていいのかわからなくて、ただ枕元に膝を抱えて蹲る。

そのうち、いつものように朝ごはんを食べにきたなつにぃが、異変に気が付い
てくれた。

まるで、いつものゆるゆるななつにぃじゃないみたいに、てきぱきとお葬式や
なんかの手配をしてくれて、私は座ってるだけでよかった。

近所の人たちだけの淋しいお葬式がすんでふたりきりになると、なつにぃに抱
きしめられた。

「ゆずちゃん。
……泣いて、いいんだよ?」

……ぽろり、涙が、落ちた。

「僕はここにいるから。
思いっきり、泣いていいよ」

「……なつにぃ。
おばあちゃんが……おばあちゃんが、死んじゃった……」

いままで泣けなかったのが嘘みたいに、涙は次々に零れ落ちる。

「ひとりぼっちに、なっちゃったよ……」

「大丈夫。
僕がゆずちゃんをひとりにしないから」
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