眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「……夢でもご覧になったんじゃないですか?」

「……そう、かもしれません。
でも、夏生に会えて嬉しかった……」

柏木さんはなにもいわない。
不機嫌そうな顔が、もっと不機嫌そうになった。
いわなきゃよかった、そう思ったけどもう遅い。

……私は。
柏木さんの気持ちにもう気付いていたけど、気付いてないふりをしてた。

きっと、柏木さんも私の微妙な気持ち、知っている。

知ってて、知らないふり、してる。

そうしないと、傍にいられなくなるから——。
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