眼鏡とハンバーグと指環と制服と
自分じゃ選べないからって、わざわざスタイリストの人を呼んで選んでくれた
らしい。

それに、おばあさまが私のお稽古を受け持つことに、最初は反対だったみたい
だし。

実際会った印象と聞く話とが違い過ぎて。
本当のおじいさまが知りたい、って思うようになってた。


会社に着いてまず私に任されたのは。

朝とお昼、会長にコーヒーをお出しすること。

あ、会社では会長と呼んでください、っていわれた。

柏木さんは仕事部屋を持ってて、そこに給湯設備も備え付けられてる。

教えられるままにコーヒーを淹れ、初回は柏木さんと一緒に持って行く。

「おはようございます。
コーヒーをお持ちしました」

「おはようございます。
今日からよろしくお願いします」

会長は私を一瞥しただけで、なにもいわない。
あたまを下げて部屋を出て、……ため息。

「緊張した……」

「次からはおひとりでお願いしますね」
< 545 / 613 >

この作品をシェア

pagetop