眼鏡とハンバーグと指環と制服と
おろおろしながら携帯を操作し、通話ボタンを押して耳に当てたとき、遠くか
らなつにぃが走ってきてるのが見えた。

「ごめんねー、ゆずちゃん。
千ヶ崎くん、しつこくって。
電車行っちゃったねー。
次の電車まで待とうか」

「……帰る」

「ゆずちゃん?」

なつにぃは息を切らせながら、きょとんとした顔で私のこと、見てる。

「一緒に出かけて、なつにぃに嫌な思いさせるんだったら、出かけたくない。
もう、帰る」

「それは困るなー」

悔しくて俯いたら、あたまをぽんぽんされた。

「だって僕、ずっと凄く楽しみにしてたんだよ?
夏休みはゆずちゃんと一緒に水族館に行って、ゆずちゃんといっぱい手繋い
で、ゆずちゃんとゆずちゃんの作ったお弁当食べるんだ、って。
……ゆずちゃんは楽しみじゃなかったの?」

「……楽しみにしてた」

「なら、行こ?ね?」

「……うん」
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