眼鏡とハンバーグと指環と制服と
……だってこのあいだ、遊んでて金がもらえるんだったらこんなにいいことは
ない、みたいなこといってたし。

「そうですね。
芝浦の地位を喰い物にしている晃匡様や香奈恵様のことは、実の孫や子供とは
いえ、毛嫌いなさってますね」

「……なら、なんで」

「満智子様に対する負い目、みたいなところもあります。
それに、やはり血筋は気になるというか」

「……そうなんですね」

継がせたくない人間に、自分の会社を譲るって、どんな気分なんだろ?
でも、そこまで血筋って大事なのかな?
こんなことを考えてる私が、子供なのかな。


それからしばらく、似たような日々が続いた。
会社に行って、自習とお手伝い。
毎日二回、会長にコーヒーをお出ししてるけど、私と言葉を交わすことはな
い。
いつも不機嫌そうにじろりと見られるだけ。

……なんだろね?
やっぱり私のこと、嫌いなのかな。

でも、会社の中で聞く会長の話は、立派な人なんだって想像させた。

……産休取った女性が安心して復帰できるように、社内に保育園を作ってた
り。
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