眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「はい。
お饅頭、買ってきました。
お茶、淹れますね」

「…………」

淹れたお茶と買ってきたお饅頭をお出しする。
私も椅子に座って、お饅頭を食べた。

「……おまえの父親の話を、聞かせて欲しい」

二つ目のお饅頭を食べ終えたおじいさまが、ぽつりと呟いた。

「えっと。
私、全然覚えてないんです」

「……死んだのは五歳のときだったか。
覚えてないのも無理はないか」

「……小さかったからもありますけど。
両親の記憶、全然ないんです。
お葬式がすんで熱が出て、そのあと全部、忘れちゃってたそうです」

「……そうか」

おじいさまの顔がもっと不機嫌そうになった。

「あ、でも、おばあちゃんと夏生……あ、前の旦那さんですけど、たくさん両
親の話をしてくれました。
実感はあんまりなかったですけど。
でも、それが嬉しかったです」
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