眼鏡とハンバーグと指環と制服と
柏木さんはケーキを買ってきてくれた。

ケーキといっても苺のたくさん載ったタルト。
ショートケーキも、あれからちょっと苦手になってたチョコケーキも避けてく
れた。

最近の柏木さんはまるで、……父親のような感じ。

といっても私が知ってる、父親のイメージの、近藤のおじさんとはちょっと違
うけど。

でも、うん。
父親、だ。

「それでですね。
……大学受験、挑戦してみませんか?」

「えっ?無理!無理ですよ!」

「でも、来年の予行演習になりますし。
それに、もし受かればそれはそれで」

「でも……」

「こういういい方をするのもなんですが。
合格することが目的ではなく、来年のために雰囲気を知ることが目的なので、
気楽に受けてみてはいかがですが?」

「……じゃあ、受けてみます」

「はい。
では手配しておきます」

「よろしくお願いします」
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