眼鏡とハンバーグと指環と制服と
促されて中に入ると、私をベッドに座らせてくれた。

「岬にホットミルクでも入れてもらってきます。
ちょっと待っててください」

「……はい」

柏木さんが部屋を出て行くと、中をきょろきょろ見渡した。

……初めて入る、柏木さんの部屋。
私と暮らすのは一時的なものだから、もともと住んでたマンションはそのまま
にしてある、って聞いたことがある。
だから、あまり物がない。
落ち着いたピンクで整えられた、いかにも女の子な私の部屋と違い、モノトー
ンでシンプルに揃えてある。
ほんと、柏木さんの部屋、って感じ。

「お待たせしました」

「ありがとうございます」

手渡されたカップを受け取る。
中に入ってたのは甘い香りのホットミルク。
柏木さんはそのまま、パソコンデスクの椅子に座った。

「飲んだらお部屋に戻られてくださいね」

「はい」

ゆっくりとカップを傾ける。
ミルクは適温で、なんだかほっとする。

私が飲んでいるあいだ、柏木さんは黙って私を見てた。
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