眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「……柏木さん」

「はい」

「私に、将来的とはいえ、おじいさまの跡を継ぐことなんてできると思います
か?」

ミルクを飲み終わって、もやもやしていたことを聞いてみた。

「……そうですね。
確かに初めのうちは戸惑うことだと思います。
しかし、我が社のスタッフは優秀ですから、ちゃんと夕葵さんのことをお支え
します。
きっとすぐに慣れますよ」

「柏木さんは私の傍にいてくれるんですよね?」

「……そう、ですね。
さあ、飲み終わったのなら部屋に戻られて、お休みになってください」

……微妙な間に不安になった。
もっと聞きたかったんだけど、追い出すように部屋を出されて、聞くことがで
きなかった。


翌朝、柏木さんはいつも通りだった。
いつも通り私の勉強を見てくれて、よくできたときはいつも通り褒めてくれ
て。

……いつも通り、のはずなのに私は不安で仕方なかった。

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