眼鏡とハンバーグと指環と制服と
降りることを躊躇っていると、助手席のドアが開けられて促された。
玄関のドアの前に、柏木さんとふたり並んで立つ。
どうしていいのかわからずに、服の裾をぎゅっと握ってた。

ピンポーン。

「……はい」

チャイムが押されて、すぐに夏生が出てきた。
私の顔を見た夏生は……泣き出しそうに笑った。

「柏木と申します。
夕葵さんを長々と連れ出して、申し訳ありませんでした。
月原さんの元に、お返しいたします。
芝浦会長も、くれぐれもよろしくいっておいてくれ、とのことです」

「……そう、ですか」

「……はい」

どうしていいのかわからずに、ただ突っ立ってた。
そっと柏木さんに背中を押されて思わず見上げると、黙って頷かれた。
意を決して一歩、前に進む。

「おかえり、ゆずちゃん」

「……た、ただいま」

優しい、夏生の笑顔。
久しぶりで嬉しいはずなのに、胸が苦しい。
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