眼鏡とハンバーグと指環と制服と
泣き続ける私を、なつにぃはずっと抱きしめていてくれる。

……なんだか懐かしい。
ずっと前にも、こんなことがあった気がする。
でも、身内のお葬式なんて私の記憶の中ではこれが初めてで。

なにかを思い出しそうなんだけど、結局思い出せなかった。


気持ちも落ち着いてきて明日からは学校に復帰しよう、そう思ってた今日、お
ばあちゃんの遺言を預かってるって弁護士さんがきて……いまに至ってるとい
うわけです。


現状を保留したまま、翌日は学校へ行った。
いつも通り朝ごはんを食べにきたなつにぃは、とりあえずなにもいわなかっ
た。

……あ、なつにぃは私が生まれる前から、隣に住んでる。
早くにお母さんを亡くして、うちのおばあちゃんに面倒みてもらってたから、
兄妹みたいに育った。

ちなみになつにぃのお父さんは、なつにぃが高校生のときから単身赴任&向こ
うでいい人見つけて再婚してる。
もう、こっちに戻ってくる気はないらしく、家はなつにぃのものになってるら
しい。


「夕葵、もう大丈夫?」

「うん。
ありがとう、香織ちゃん」
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