ベンチの二人
ベンチの二人
「あ、俊哉くん?えっとね……え?違うよ。あたしの事はいいの。……あ、うん、あたし今公衆電話で話してるんだけど…今さぁ、時間空いてる?………そう…よかった……じゃぁ、いつもの場所にいるね…。」
ガチャ。電話を切った。三枚入れた十円玉は二枚になって帰ってきた。
今日はあの人の誕生日。この日の為に、私はどれだけ苦労した事だろう。まあそれはいい。そんな苦労も彼の笑顔で吹き飛んでしまうことだろう。総てを包み込んでしまいそうな、あの笑顔がもうじき見られる…そう考えただけで、美紀の心はすっかりほぐされてしまった。美紀は、安っぽい音を立てて落ちてきた十円玉に一瞥をくれると、それを取ろうとはせずにいつもの場所へと向かった。
ガチャ。電話を切った。三枚入れた十円玉は二枚になって帰ってきた。
今日はあの人の誕生日。この日の為に、私はどれだけ苦労した事だろう。まあそれはいい。そんな苦労も彼の笑顔で吹き飛んでしまうことだろう。総てを包み込んでしまいそうな、あの笑顔がもうじき見られる…そう考えただけで、美紀の心はすっかりほぐされてしまった。美紀は、安っぽい音を立てて落ちてきた十円玉に一瞥をくれると、それを取ろうとはせずにいつもの場所へと向かった。