御曹司と偽装結婚はじめます!
香川さんは平然とした顔をしているけれど、私は顎が外れそうだった。

三階建ての私のマンションとはまるで違い雲に届きそうなほど高く、もはや何階建てなのかすらわからない。
さらに駐車場には高級外車がずらりと並び、圧倒されてしまった。

こんなマンション、映画の中の世界みたい。
お医者さまって、やっぱりお金持ちなんだ……。


「歩ける?」

「はい。大丈夫だと……」


彼と話していたら、動転していた気持ちも少し落ち着いた。
もう歩けるはずだとドアを開け、降りようとすると……。


「あっ……」


片方のヒールが折れていることに気づかず足を着いて、よろけてしまった。


「危ない!」


助手席の方に回り込んでいた香川さんは、とっさに私の腕を支えてくれた。


「まったく、ハラハラさせる」

「すみません……」


こんなに迷惑をかけてばかりで申し訳ない。


「もう面倒だ」
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