御曹司と偽装結婚はじめます!
彼のそんな言葉と同時に体がフワッと浮いた。
また、抱き上げられたのだ。


「あっ、あの……パンプスを脱げば歩けます」


慌ててそう言ったけれど、下ろしてくれない。


「いいから。雨宮さんは猫だけ守ってな」

「猫……」


香川さんが私と同じように子猫を気遣ってくれるのがうれしくて、私は彼に甘えた。


地下駐車場から乗ったエレベーターは、すごい速さで上へと上がっていく。
そして四十三という表示で止まると、ドアが開いた。

四十三階に足を踏み入れるなんて、初めての経験だ。

彼は私を抱いたまま奥まで進むと、ドアの前でやっと私を下ろした。


「ここ」


彼は鍵を開け私を玄関に入れると、「ちょっと待って」と言って奥に行き、タオルを持ってきてくれる。


「体が冷えてる。ケガの治療の前に熱いシャワーを浴びておいで」

「でも……」
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