御曹司と偽装結婚はじめます!
浴室を出ると、いつ持ってきてくれたのか、彼のジャージが置かれていた。そ
れを借りて着たものの、あまりにブカブカで自分で笑ってしまうほどだ。


「あの……ありがとうございました」


そのままリビングに行くと、あまりの広さに驚いた。

おそらく二十畳近くはあると思う。
その片隅の床に座っていた彼は子猫を抱き、優しい目で見つめていた。


「俺も浴びてくる。コイツよろしく」

「はい」


彼から子猫を受け取ると、さっきとは別のタオルでくるまれていた。

香川さんも猫が好きみたい。

あの優しい眼差しはそれを物語っていた。


「お前、かわいい顔してるね」


助けたときは暗くてわからなかったけれど、茶色と白のいわゆる“茶トラ"柄の子猫は、濡れていた毛が乾くと、さっきよりも大きく見える。

大きな目がじっと私を見つめるので、思わず頬が緩んだ。
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