御曹司と偽装結婚はじめます!
会ったばかりの人の家に転がり込むなんて……とは思ったけれど、香川さんはとても優しい人だった。


「いい人に出会えたね」


彼と出会えなければ、この子を抱いて右往左往していたところだ。

ちょっと元気のない子猫を抱きしめて温めていると、張りつめていた気持ちが緩んで、どっと疲れが出てきた。


「ちょっとだけ……」


子猫を抱いたまま、ソファに横たわる。
彼に買い物に行かせておいて失礼だとは思ったものの、疲れには敵わなかった。



「……あっ」


どうやらそのままウトウトしてしまった私は、「ミャー」という猫の鳴き声で飛び起きた。

手の中にいたはずの子猫がいなくなって慌てていると、「寝ててもいいぞ」と香川さんの声がする。
体にかけられていた毛布も、彼が用意してくれたのだろう。


「いえ、すみません」


私は床にあぐらをかいて、子猫にミルクを与えている彼の横に慌てて行った。
< 18 / 32 >

この作品をシェア

pagetop