御曹司と偽装結婚はじめます!
辺りをキョロキョロ見渡しても、その鳴き声がどこから聞こえてきたのかわからない。
空耳だったかもしれないと再び歩き出す。


――ミャーア。

やっぱりいる。
甲高い鳴き声は、おそらく子猫だ。

こんな雨の中どこにいるのだろうと再び辺りを注意深く探してみる。


「あっ!」


すると幹線道路に向かって足を進めている、両手に収まりそうなほど小さな子猫を見つけた。


「ダメッ。そっち行っちゃ、ダメ!」


この暗い夜道であんなに小さな猫をドライバーが見わけられるはずがない。
私は傘を放り出して、走り出した。


「ダメよ。行かないで」


目の前の車線にヘッドライトが近づいてくるのが見える。
それでも諦めきれずに走り、やっと子猫に手を伸ばした瞬間。


――キキキーッ。

車のブレーキ音が辺りに響き、私は派手に転んでしまった。
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