御曹司と偽装結婚はじめます!
でも、彼の言う通り、ブレーキが遅かったら私が死んでいたかもしれない。


「頭を打ってない?」

「はい、大丈夫です」


私はそう返事をして立ち上がろうとしたものの、車との距離があとほんのわずかだったことを知った瞬間、急に怖くなり足が震えて立つことができない。


「あれ……」


必死に何度も立とうと試みたのに、どうしても足が言うことを聞かない。
すると、その様子を見た彼が、「仕方ない」と私を軽々と抱き上げ、自分の車に戻っていく。


「あっ、あの……大丈夫ですから」

「大丈夫って、立てないじゃないか。いいから子猫を離すな」

「……はい」


彼は自分の服が汚れるのも気にせず、おまけに高そうな車のシートが濡れることすら気にせず、私を助手席に乗せてくれた。

そして、転がっていた私の荷物を取ってきてくれると、自分も車に乗り込んだ。
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