御曹司と偽装結婚はじめます!
「すみません。こんなに濡らしてしまって」


とっさに飛び出してしまった私が完全に悪い。
それなのに彼は、とても親切にしてくれる。


「んー、これしかないけど」


彼は後部座席に置いてあったハンドタオルを私に渡してくれた。


「すみません。本当にありがとうございます」


私はそのタオルを受け取り、手の中で震えている子猫を包んだ。


「あっ、はは……」


すると彼は途端に笑い出す。
なにがおかしいんだろう?


「どうかされました?」


私が首を傾げると「普通、自分を拭くもんだぞ」と言われ、ハッとした。


「あっ、ごめんなさい。猫に使ったら失礼ですよね」


私が慌てて謝ると、彼は再びクスクス笑い「そんなことない」と子猫の頭を撫でる。

よかった。怒らせてしまったかと思った……。
< 7 / 32 >

この作品をシェア

pagetop