御曹司と偽装結婚はじめます!
「家はどこ?」

「もう少し坂を上ったところにあるマンションです。でも……」


私が子猫をチラッと見つめると、彼はすぐに口を開いた。


「ペット、禁止なの?」

「……はい」


つい最近も、こっそり猫を飼っていることが見つかった人が追い出されたばかりだ。


「呆れるな。どうにもならないくせに……」

「でも、放っておけないでしょ?」


思わずムキになってそう言うと、彼は「それもそうか」と同意してくれた。


「それに、その足……。仕方ないからとりあえず俺の家に行くか」

「あなたの家に?」

「俺、一応外科医なんだ。家に行けば治療できる」


お医者さまなの?

改めて隣に座る彼を見つめる。

すっかり濡れてしまった髪は少し長めで、ほんの少し茶色がかっている。
切れ長の二重の目の下の鼻筋はスッと通り、薄い唇がそこはかとなくセクシーだった。
それに、私を軽々と抱き上げた彼は、かなり鍛えられた体の持ち主のようだ。
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