agaIN
日常

カツン、カツン。
どこか鋭い様な足音が響く。
気付けば周りはただの暗闇でしかなく、私がここに存在するかさえも疑わしく思えた。
…カツン、カツン。
ただひとつ、わかること…足音は確実に近づいている。
「だ、誰!?」
不意に裏返った声で私は叫んでいた。
『迎えに参りました。今宵、貴方はALICEとしてー…』

ジリリリリリリ!
「きゃあっ!」
いつもと変わらない、私の部屋がそこにはあった。
「ゆ、夢…」
汗ばんだままの手、額、頭に残ったままの足音とあの…声。夢と言うにはあまりにもリアルだった。
「何だったのかな…嫌な感じ…」

私は知らなかった。
これが全ての始まりということを。


「ね、ちょっと!」
「わわ!びっくりした…」
慣れた学校に、慣れた交友関係…のはずなのに、あの夢のせいか、学校に来てからも落ち着けずにいた。
「今日転入生が来るらしいよ!しかも男子っ!」
明るい髪をなびかせるテンションで、親友・柊真由子が騒ぐ。
「珍しいね、もう文化祭とかも終わってるのに」
「格好良いかな!?」
いや、私に聞かれても…ねぇ。

真由子のテンションをなんとか抑えて、私は中庭に出てきていた。
なんだか、校舎の中は息苦しい。
「…はぁー…」
深いため息を吐いて、芝生に横になった。

…頭に浮かぶのは、やっぱりあの夢のこと。

< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop