agaIN

ガサ、ガサガサ。
草木をかきわける様な鈍い音が聞こえる。慌てて寝かせていた上半身を起こす。
「………だ、れ?」
口が勝手に動いていた。現れた少年は明らかにうちの制服を纏っているのに…どうしてだろう。少し怖い。
「…千河柚季」
ちがわ、ゆき。聞こえたのがきっと彼の名前。
深い赤色の髪の毛は襟足が長めで、風になびく。髪の毛のかかる切れ長の目は真っ直ぐ私を見つめていた。
「…千河、くん」
よく見ると、ものすごく美形。見つめられて、少しだけ顔が火照る。
「やっと…見つけた」
「…へ?」
「また、あとで」
クールに見える顔に、優しい笑顔が浮かんでいた。
「…はい」

ぼうっとする頭がやっと冴えきった時、既にHRは終わる時間になっていた。
慌てて教室に戻ると、真由子が抱きついてくる。
「わわ、何事!?」
「だって!転入生!めっ…ちゃくちゃ格好良いの!ほら、あの人!」
相変わらずイケメンに弱い、弱すぎる。
「って…千河くん…?」
真由子が指差した先には、見間違うことがない深い赤髪…千河柚季、彼だ。
「ちょ、なんで名前知ってるの!?し、知り合い!?」
「え、あー…さっき中庭で会ったんだよね」
羨ましい!と騒ぐ真由子を横に、私は寒気を感じていた。

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