白と黒〜2つのリストバンド〜
私は空の背中を押して帰そうとした。


「ちょ、まてよ、まだあるんだから」


「これ以上何があるっていうのよ!さっさと帰って!」


私が叫ぶと道の向こうから車が来るのが見えた。


すると空は振り返って私を引き寄せた。


「……っ……」


空に抱きしめられる状態になってそのまま車が通り過ぎるのを待っていると、空の顔が耳元にきた。


「───」


「……っ……」


今…


小さな声だった。きっと世界中で私にしか聞こえなかった。


いや、私の聞き違いかも…私にもきこえてなかったかも。


「…なんて言ったの?」


「俺は何百回でも言えるけど、もう一回聞く?」


私の質問に空は楽しそうに笑いながら答えた。


私の聞き違いではないらしい。


「言わなくていい…」


私がそっぽを向くと、空の手が頭の上に来た。


「………」


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