暁天の星


「ん!?鷲見くん!?」



名前を書いた時に、先生は身を乗り出してきた。



鷲見という名前が気になったんだろう。




「えっ?」

「あ、ごめんね?気にしないで。」



いや、気にするけど…。


とりあえず自己紹介だけしておくことにした。




「5年3組の鷲見 那月です。」

「…保健医の深見です!名前似てるね〜。」



どことなくぎこちない先生は、僕が鷲見だと知っての態度なんだと思う。



だけど、この学校の先生で、こんなに距離感の近い先生は深見先生だけな気がした。


普通に接してくれる。




だってこの学校は、お父さんの手が回ってるんだろうから。





用紙に記入し終わった僕に、複雑そうに微笑む先生は、湯気の上がるホットココアをくれた。




「風邪ひかないでね。今日は早退した方がいいよ。」



先生は昆布茶を飲みながらそう言ったけど、すでに寒い気がする。



早退理由、トイレの水を被ったって…。


ダサすぎ…。




「帰る準備だけできる?」

「はい。」




借りたドライヤーで髪を乾かし終わった僕は、先生のその言葉に頷いて、ランドセルを取りに教室に戻った。





「あれえ?なつきくん、帰っちゃうの?」



無視してロッカーからランドセルを無造作に取り、マサルくんの言葉を聞き流した。



< 129 / 135 >

この作品をシェア

pagetop