暁天の星
「ん!?鷲見くん!?」
名前を書いた時に、先生は身を乗り出してきた。
鷲見という名前が気になったんだろう。
「えっ?」
「あ、ごめんね?気にしないで。」
いや、気にするけど…。
とりあえず自己紹介だけしておくことにした。
「5年3組の鷲見 那月です。」
「…保健医の深見です!名前似てるね〜。」
どことなくぎこちない先生は、僕が鷲見だと知っての態度なんだと思う。
だけど、この学校の先生で、こんなに距離感の近い先生は深見先生だけな気がした。
普通に接してくれる。
だってこの学校は、お父さんの手が回ってるんだろうから。
用紙に記入し終わった僕に、複雑そうに微笑む先生は、湯気の上がるホットココアをくれた。
「風邪ひかないでね。今日は早退した方がいいよ。」
先生は昆布茶を飲みながらそう言ったけど、すでに寒い気がする。
早退理由、トイレの水を被ったって…。
ダサすぎ…。
「帰る準備だけできる?」
「はい。」
借りたドライヤーで髪を乾かし終わった僕は、先生のその言葉に頷いて、ランドセルを取りに教室に戻った。
「あれえ?なつきくん、帰っちゃうの?」
無視してロッカーからランドセルを無造作に取り、マサルくんの言葉を聞き流した。