暁天の星


保健室に戻ると、先生の他に、肩までの緩やかなウェーブが光る小柄な後ろ姿と、栗色の長い髪が揺れるスラッとした華奢な後ろ姿があった。



「おっ。元気かクソガキ。迎えにきてやったぜ。」



晃…と、里香ちゃん…?


なんで?




「保護者の方にお迎えにいらしていただいたからね。」




先生は気を利かしたようにそう言うけど僕は1人で帰りたかった。


まあ連絡するのが決まりなんだろうけど。




「つかお前、風邪引いてたっけ?」

「えっ?」

「熱でもねえのに早退ってなんかおかしいと思ってよ。なあ里香。」

「そうね、何かあった?」




鋭すぎる晃と質問してくる里香ちゃんに黙りこくる僕と先生…。


急に静まり返る保健室…。




「言えないの?」



満面の笑顔を咲かせて聞いてくる晃に僕は勝てない…。


逆に怖い…。

その笑顔…。




「水遊びよねっ!お友達とちょっと遊んでたら濡れちゃった…のよね?」




先生の必死のフォローも晃に届いてるかはわからない。


でも仕方ない。


先生の立場では何も言えないから。





「へえ〜、水遊びねえ?まじでえ?」




一言も返せなくてさっきから下を向いてる…。



晃が怒ったり、僕を責めることなんてないって分かってるけど、何か虐められてるって口にするのが嫌だった。




答えに渋っていると、ガラッと空いた保健室の扉。そこから入ってきたのはマサルくんと、モブキャラ2人。




「あ!なつきくん!体調大丈夫?」





< 130 / 135 >

この作品をシェア

pagetop