暁天の星
保健室に戻ると、先生の他に、肩までの緩やかなウェーブが光る小柄な後ろ姿と、栗色の長い髪が揺れるスラッとした華奢な後ろ姿があった。
「おっ。元気かクソガキ。迎えにきてやったぜ。」
晃…と、里香ちゃん…?
なんで?
「保護者の方にお迎えにいらしていただいたからね。」
先生は気を利かしたようにそう言うけど僕は1人で帰りたかった。
まあ連絡するのが決まりなんだろうけど。
「つかお前、風邪引いてたっけ?」
「えっ?」
「熱でもねえのに早退ってなんかおかしいと思ってよ。なあ里香。」
「そうね、何かあった?」
鋭すぎる晃と質問してくる里香ちゃんに黙りこくる僕と先生…。
急に静まり返る保健室…。
「言えないの?」
満面の笑顔を咲かせて聞いてくる晃に僕は勝てない…。
逆に怖い…。
その笑顔…。
「水遊びよねっ!お友達とちょっと遊んでたら濡れちゃった…のよね?」
先生の必死のフォローも晃に届いてるかはわからない。
でも仕方ない。
先生の立場では何も言えないから。
「へえ〜、水遊びねえ?まじでえ?」
一言も返せなくてさっきから下を向いてる…。
晃が怒ったり、僕を責めることなんてないって分かってるけど、何か虐められてるって口にするのが嫌だった。
答えに渋っていると、ガラッと空いた保健室の扉。そこから入ってきたのはマサルくんと、モブキャラ2人。
「あ!なつきくん!体調大丈夫?」