暁天の星
残った最後の1人はリュウに抱きかかえられながら、那月のことをじっと見つめていた。
「ヒーナ。ほら。お前も挨拶。」
リュウの言葉も右から左のチビ。自分の全体重をリュウに預けている。完全に無防備だ。
「西垣 妃那(にしがき ひな)。今3歳でこの家の最年少。」
リュウに抱かれたままの妃那については、那月は里香からの説明を受けて、ナ ツ キだよ、と分かりやすいように挨拶をしてた。
妃那は自分に話しかけてきた那月を見て、何秒か固まったまま、瞬きだけしてから。
うんうんと2回頷いて。
「ヒナだお。」
そう言ってから小さく笑って、眠そうに目をトロンとさせた。
「ごめんね、ちょっと人見知りなんだ。」
困ったように里香は言うけど、那月はすぐさま首を振った。
「リュウに抱っこされてるから眠くなっちゃったね〜。」
里香が妃那の顔を覗き込む。リュウが静かに体を揺らす。
すぐさまスヤスヤと気持ちよさそうに眠る妃那。
そんな妃那を見て、リュウと里香、那月の3人は顔を見合わせて笑ってた。
俺と晃はその間、里香の作った飯をひたすら食ってたけど。
美味えし。食わねえとなくなるし。
「あ!晃!ハル!みんなの分なくなっちゃうでしょ!」
「成長期なんだよ、なあハル。」
「ん。里香もそんなカリカリすんな。」
「もう!」
家族が増えた日、騒がしく過ぎる夜は春の風に溶けていった。