暁天の星
「アキラがさ、この家には色んな人がいる。みんなそれぞれ抱えてるものがあって、それぞれの過去があるんだって、前言ってて。」
「うん。」
「それが僕の人生であったことに変わりはないから、いつか向き合えるといいねって、アキラが言ってくれて…。」
「……。」
「…なんだろう、ちょっとだけ、自分が不幸だって思わなくなったよ。」
那月はそう言ってココアを飲んだ。
そんな甘ったるいもんよく飲めんな、お前。
まだ全然減ってないブラックコーヒーを消費した。
那月の強がりを、苦いコーヒーとともに喉の奥に流し込む。
強がっているように見えた。
目の前のコイツが。
「お前は親が嫌いだっつったな。」
俺が投げかけた言葉を、那月は首を傾げて聞いた。
「え?」
「嫌いになれる親がいるじゃねえか。俺には、好きにも嫌いにもなれる親がいない。無い物ねだりなんだよ、人間って。」
那月に言ったはずの言葉は、俺自身に言い聞かせてるようだった。