暁天の星
「あたし!?」
びっくりして聞き返したけど、男の子はそんなあたしを見てははっと笑った。
「うん。他に誰もいないでしょ?」
「あ、うん…。」
「で、名前は?」
「あたし、佐伯里香。あなたは?」
「俺は原田 湊人(はらだ みなと)。これからよろしく、里香チャン。」
積極性のある彼に思わずびっくりしてしまったけど、だからこそ今友達になれたんだよね。
高校生になって初めての友達だもん。
仲良くやっていこう。
遠くから原田くんを呼ぶ友達の声がした。
それに応えて鞄を肩にかけた原田くんは、あっと何か忘れていたものを思い出したかのような反応をする。
「里香チャン。何かペン持ってる?」
「ペン?」
「そう。できれば油性。」
って首をかしげるもんだから、たまたま持っていたマジックペンをあたしは貸した。
と思ってたら、すぐさまそのペン先はあたしの手の甲に向けられ、原田くんは何かをスラスラ書いている。
えっと…。
「これ、俺の連絡先。待ってる。」
「え、あ、うん…。」
「じゃ、また明日ね。」
「またね…。」
颯爽と帰っていく原田くんをぼーっと見送る。
残されたあたしと消えないインク。
紙に書いてくれればいいのに、という文句を慌てて呑み込み、あたしも教室を後にした。