暁天の星
【ナツキ】
…シリウス。
目の前で光る一点に視界が支配される。
それは、心までの支配。
…何年経っても変わらない自分に嫌気がした。
夜道を歩く足音が、静かな空間に響き渡る。
ふと立ち止まっていつものように空を見上げた。
もう癖なんだ。これが。
でもその度に、心が壊れそうなんだよ。
ぎゅっと握った心の臓は、命の証なのに。
今は涙をこらえて哀しみは捨てなきゃ。
頭上から降る月明かりに見つからないように。
もうそんな明るいところに行けない。
届かない腕を伸ばして痛いくらいに手を広げた先に求めたものがあるなら。
命なんていらなくて。
ああ、でも生きていなきゃ伝えられないんだ。
まつ毛が抜けても。
藍色の空に星が降っても。
もう願い事なんてしないよ。
せめて君が笑っていてくれたら満足かな。