新・鉢植右から3番目
私は急いでだだ~っとそれだけを喋る。すると受話器の向こうでは、ぶっすーとした声で奈緒が言った。
『これだけは聞くわ。それは漆原に関係がある?』
「え?───────うーん、まあ・・・そう、ね。あるといえばある」
受話器の向こう側からはこれまたため息。それからブツブツと何かを呟く声。そして、都、と聞こえた。
「はい?」
『漆原が関わってるなら私にとっては面白い話に違いないわ。なんせあの男が結婚しているという事実ですら未だに私に爆笑をくれるんだから!と、いう訳で、今晩のスケジュール開けるからそっちにいくわね。姫の顔もついでに拝む。絶対ダメ、今だけは来るな!って時間帯があれば言って』
きっと今頃凄い勢いで手帳をめくっているのだろう。私は苦笑して、来る前にメールをくれたらいつでもオッケーだと伝えて電話を切った。
それにしても・・・ダレ男が関わってれば絶対に面白い話って・・・。奈緒ったら!
夜の9時。
今日はうちのダレ男は終電で帰ってくる日で、娘は一回目の睡眠モードに入っているその時間に来てもらうことにした。
奈緒はいつも通りに実に華やかな格好と化粧と雰囲気でババーン!と登場したのだ。そしてしずか~に桜によっていき、じい~っと寝顔を覗き込んでいた。・・・・うん、何だかこの光景は見覚えがあるぞ、と思ったら、桜を産んだ日に夫である大地が同じようにしていたのだった。