新・鉢植右から3番目
「ホルモンの砂嵐の中にいるの。すごい暴風雨で、私はヤツに嫌悪感をもってしまっているの。何かイライラして、顔みたらムカつくし、触られたくない。話したくないし、そばに寄らないで欲しい!この前、私の頬についたゴミをとってくれようとしたヤツに対して、超オーバーリアクションした挙句に触らないで!って言ってしまって、ちょっとヤバイのよ」
ドドーンと落ち込んでいるのだ、を表現するためにテーブルに頬をつけてグダグダといって見せた。
すると上からは、実に平然とした奈緒の声。
「ふーん、それで?」
え?私はパッと顔をあげる。彼女はそれの何が問題なのか、ちーっとも判らないって顔をして私を見ていた。
「いや・・・それでって。問題でしょ?夫に嫌悪感もってしまってるのよ、私」
「だってそんなの普通でしょ?よく聞くわよ、子供産んだらセックスレスなんて。妻は慣れない育児で余裕がなくて、女でなくなっている状態ってやつでしょ。つまり女でなくて、あんたは今、母の時代なわけよね」
「・・・」
「男が邪魔になるのは当たり前よね。実際だいたいの男は出産に関して役には立たないし。その内落ち着くんじゃないの?大体漆原は、女抱くのも面倒臭いって男じゃなかったっけ?ヤツにとってもこの状態って悪くなくて、むしろ丁度いいんじゃないの?」
「・・・」
奈緒は、うん?と覗き込んでくる。その顔はペコちゃん人形なみに悪意はカケラもなく、いたって普通の表情だった。
「家には帰ってくるんでしょ?あの男は」