新・鉢植右から3番目
私はぽかんとしたままで頷く。すると奈緒は、片手をヒラヒラと頭の上で軽やかに振って言った。
「じゃあ何も問題ないじゃないの。野郎は元気で遠くがいいのよ。そして、金さえ運んでくれるなら全然問題ない。大体あんた達、結婚当時はただの同居人だったんでしょうが。娘も出来て、それよりはマシなんでしょう?」
私は言葉を失って黙り込む。何か言わねばと思うけれど、言葉が中々出てこないのだ。・・・まさか、まさかそーんなに一般的な意見を奈緒から言われるとは思ってなくて。勝手に期待していたのだ、このドライな女友達なら、ビックリするような意見で現状打破するような魔法をかけてくれるに違いないって────────────
「・・・そ・・・そう、よね・・・」
呟いた声はあからさまに覇気がなく、奈緒が目の前で顔をしかめる。
そしてもう一度ゆっくりと手をヒラヒラさせながら言った。
「ああ、全く。なあーによその顔!ほんと、何が同居人よ、あんたが結局これほどベタ惚れになるなんざ、神様でも思わなかったに違いないわ!」
「す、すみません」
思わず謝ってしまう。そりゃあ神様も思わなかっただろうけれど、私だって思わなかったさ!ちょっとだけだけど心の中でそう叫んでみた。まさかまさか、私がこんな状態などにって。
グダグダとテーブルの上で干からびていたら、奈緒が上から指先でつんつんと頭をつついた。
「抱いて欲しいわけ?ならいつかのオモチャを使ったらいいんじゃないの~?ほら、渡瀬さんが送ってくれたやつよ。あるんでしょ、この家に?」