新・鉢植右から3番目
ぶぶーっと私は唾を吹き飛ばしてしまった。汚いわねえ!何するのよ!って奈緒が前で叫ぶ。ああ、お茶を飲んでなくてよかった。部屋中に撒き散らしてしまうところだった!激しくなる鼓動を抑えようと、私は必死で呼吸をする。
高校生の時の同級生に、渡瀬百合という色んな意味で凄い女性がいるのだ。彼女は現在、大人のオモチャと呼ばれるアダルトグッズの制作会社の社長様なのである。そして去年、なぜか我が家にその「大人のオモチャ──渡瀬百合企画商品──」の団体さんが段ボールで送られてきたのだった。
箱を開けてビックリ仰天した私と、超淡白にそれを眺めていたダレ男。ピンクやブルーのつぶつぶのついた何とも形容のしようがない物体や、怪しげに輝く小瓶。手錠や鞭。それにやたらとカラフルな色んな箱。恐ろしくて開けられなかった。
前のアパートからこの家に引っ越してくるときに、それをどうするかで私達夫婦は悩んだ(いや、訂正。悩んだのは私だけだ。ヤツは淡々と、捨てれば?とのたもうた)。それで引越しを手伝うと張り切る両家の母親に気付かれないように、ガムテープでぐるぐる巻きにして「危険物在中」とシールまで貼り、持ってきたのだった。
すぐにそれは床下収納に仕舞ってその上にダイニングテーブルを置いた私だった。
ヤツは、何で捨てなかったの、とボソッと聞いた。そこでまだ産前の私はガルルルと噛み付いたのだ。どうやって捨てるのよ!?って。一般ゴミか!?それとも不燃物か!?ぜひオメーが捨ててくれ。私は恥かしくて手に取ることすら出来ないのに!
そんなことがあったのだ。