新・鉢植右から3番目
4、ダレ男の怒声
世紀のダレ男に惚れ直す。
面倒臭いが口癖で、一度興味を持つものにはえらく執着してしまうのを自分でも判ってるが故に、あまり物事を深く見ようとしないあの男。
名前の通りにどっしりと構えていて、ちょっとしたことにはぴくりとも動かずに欠伸をしてしまう、あの男。
・・・に、惚れ直す。
「って、どうやってー!!?」
あまりに悩みつかれて、つい自分に大声で突っ込んでしまった。うきいいいいいい~!!一人で暴風雨の中を彷徨う私はバタバタとその場で足踏みをしてみる。・・・これではただの煩くてイタい女ではないかっ!そう思って髪を振り乱した状態で、ヨロヨロと庭を眺めたりしているのだ。
・・・ううう、今日も緑は綺麗なのに。私の素敵な庭の皆、力を頂戴。私をどうか、まともで冷静な大人の女にして頂戴~!!
元々えらく静かな気持ちでヤツには惹かれていったのだった。そして、水が流れるように夫婦になったのだ。そーんな素晴らしい恋愛感情などはなく、あら、私ったらもしかしてヤツが好き?みたいな、そんな感じだった私達。惚れなおす・・・それって言葉、おかしくない?そう思うのも無理はないだろう。
だから、結局のところ、夏の間の私は勝手に一人で自己嫌悪に陥っていただけだった。
その間にも娘の桜はすくすくと育ち、夜泣きも増え、首が据わって一人で床の上をごろごろと寝返りで移動しまくるようになったし、休日には相変わらず夫婦の会話はなかったけれど、ヤツは足元で遊ばせている桜をたまーに本から目をあげて見て、それで喜んでいるようだった。