新・鉢植右から3番目


 小児科に貰った薬をなめさせて様子を見て4日目、それは突然襲ってきた。

 夜の7時過ぎで、私は晩ご飯を終えて夫の分を用意し、半分くらいまで後片付けをしたところで娘にミルクをやっていた。今晩は夫の大地はもうすぐ帰ってくるはずだった。会話はいつものようにないかもしれないが、お帰りくらいは言うこと、そう自分にきつく言い聞かせていた。

 いつものように、居間にある柱にもたれかかって、娘を抱っこする。小さな両手で哺乳瓶を一生懸命もって、桜はンクンクと音を立てながら飲んでいたのだ。

 まだちょっと熱があった。というより、ここ3日くらいずっと37度の後半をキープしている状態だったのだ。だけど本人は機嫌もいいし、ミルクも飲む。離乳食だって食べていた。だから私は何てことない、ちょっとした風邪なんだろうって安心していたのだ。

 私は自分で瓶を掴んでミルクを飲む桜を見ながら静かに揺れる。両手は添えるくらいでいいから、あとはぼーっとしてしまうのだ。そして、そのまま眠くなってくる。

 揺れるのになれて、頭に霞がかかる。ゆっくり・・・ゆっくりと・・・揺れて・・・。私はいつの間にやらうつらうつらしてしまっていた。

 ああ・・・温かい・・・赤ん坊って、本当に・・・いい、匂いが───────────

 ガチャン、と音がした。


 私はハッとして目を開く。あれ?何か、今、ガラスの音が・・・。


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