新・鉢植右から3番目


 パッと手元を見ると、哺乳瓶が手から転げ落ちて床を滑っていく。つい居眠りをして滑り落としてしまったようだった。

「あ、あらあら・・・」

 私は転がっていく哺乳瓶をとろうとして片手を伸ばす。そうしながら、桜を覗き込んだ。

「さーちゃんもお手手離しちゃったのかな?いつもぎゅうって握ってるのにね~・・・」

 あの小さな手でガッシリ持ってるのに──────そう思って娘に笑いかけ、私はハッと固まった。

 桜の、娘の様子が変だった。今までウトウトしながら自分も揺れていたために気がつかなかったけど、娘の体がぶるぶると震えている。両手はきゅっと体の中心で強張っていて、口から飲みかけのミルクが零れ落ちていた。

「・・・え」

 ええっ!?バチっと目が開いた。

「さ、桜?」

 小さな体を抱きしめる。痙攣していた。娘はビクビクガタガタと全身で震え、全身に力をいれて両手が縮こまっている。そしてさっきまでは閉じていた目をうっすらと開いて────────だけど、それは白目だった。

 驚きで、一瞬呼吸が止まった。

「ひゃあっ!?さ、桜────────」

 パニックに陥った。ざざーっと全身の血が引いたのを感じた。ぐらりと回る視界の中で、それでもぶるぶると痙攣する娘だけはしっかりと見ていた。

 何・・・何が、起こってるの!?どうして、いきなり──────この子が、痙攣して───────・・・


< 37 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop