新・鉢植右から3番目


 大丈夫、だった・・・。その安堵はあまりにも大きくて、私はずるずると座り込みそうになる。・・・大丈夫だった。よかった・・・呼吸も、戻ったって。障害が残るとは考え難いですって。ううう~!!神様、ありがとうございましたあああ~!!そんでそんでそれから勿論、救急車の人達や病院の人達も皆皆、ありがとうございました~!ああ、全員をひとまとめに集めて抱きしめてスリスリしてしまいたいっ!

 体から力は抜けていたけれど、頭の中ではぴょんぴょんと跳ね回っていた私だ。

 泣き叫びたいような笑いまくりたいような混乱した状態だった。

 夫の大地は、点滴を待っている間、壁にもたれてパイプ椅子の上で寝ているようだった。頭が少し落ちていて、ヤツの胸が静かにゆっくりと上下している。

 安心したのだろう。この人はこの人なりに、とても心配したのだろう。冷静に見えたけれど、それはあくまでも私よりは冷静ってだけだったのかもしれない。

 それにしても本当にいつでもどこでも寝る男よね、壁にもたれて眠る夫を見て、私は何度か瞬きをした。

 パニックと興奮の影響で全身が疲れていて、私もぐったりと壁にもたれかかる。

 その時、ちょっと、ううっときた。

 泣きそうになったのだ。

 ・・・・ヤツに、守られた、それが判ったからだった。

 精神的に追い詰められて発狂しそうだった私を、ヤツは一言で現実へと連れ帰った。

 初めて怒鳴られたあの瞬間も、待合室でのあの瞬間も。

 私は彼に、救われた。



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