新・鉢植右から3番目
それよりは娘が心配だったのだ。だから、そうか、あの時確かに触られたけど、嫌じゃなかったなあ!などと考えたのは今が初めてだ。
電話の向こう側で奈緒がケラケラと笑っている。
『抜けたんじゃない、どうしようもない時期を。姫も無事だったし、万々歳ね。今晩あたり漆原にタッチしてみたら?嫌じゃないんじゃないの、もう』
タッチって。あんたが言うのはそ~んなソフトなことなんかではなく、ガッツリ襲えってことだろうよ。そう思ったけど、とりあえずおしとやかに笑っておくだけにした。ほほほ、と。
ちょっと心惹かれる話ではあったのだ。
今晩はわりと早く帰ってくるあのダレ男に、自分から触れてみたらどうなるかな~って。自分の口元がにんまりと笑ったのを感じた。
今それを考えている時点では、嫌悪感とか、「とんでもねーぜ!」の拒否感とかはない。考える、想像するだけなら今でももう大丈夫ってことだ。
・・・ヤツに、触ってみようか。それでそれで──────まだ、「うおっ!!」って思うようだったら・・・。
正直に、カミングアウトして謝ろう。
一人でそう決心して頷いた。
ケロッと謝ろう。「ごめんね」って。でもその内戻る(らしい)からって。それまではどうか、私から最低1メートルは離れて、出来るだけ顔を見せないで暮らしてくださいって。すんませーん、でも自力でもどうしようもないのよ、おほほ~って。
よしよし。一人でシミュレーションして頷いていたら、受話器の向こうから奈緒の怒鳴り声が聞こえた。
『ちょっと都~!!?聞いてんの?!どこ行ったあああああ!?』
・・・あ、奈緒のこと忘れてた。