新・鉢植右から3番目


 夕食が終わると、ヤツが桜をお風呂に入れてくれた。休みの日は前から頼めばそうしてくれたから、それは驚きなわけではないが自発的だったのは初めてかもしれない。

「え?いれてくれるの?」

 桜をヒョイと抱き上げてスタスタとお風呂場へ向かうヤツがこっちも見ずにうんと頷いたので、私は慌ててお風呂の準備をする。

 タオルを広げ、それから別にロンパース、下着、その上に更に紙おむつを広げて・・・。

 私がバタバタとしている間にも、ヤツと桜はお風呂に入ってしまった。普段はお湯を怖がってあまり風呂では機嫌のよくない娘が、ヤツと入るとブーイングをかまさないのがちょっと不満な私だ。

 ・・・やっぱり安心感が違うってこと!?腕の強さや大きさの差か!?なんかそれだけで負けてるなら嫌なんですけど!!など、一人で凹んだりムカついたりもしたけれど、まあ娘の機嫌がいいに越したことはないのだ。だから、いいや。やっとそんな心境になれたのだ。

 桜は今晩の為に、昼寝を強制的に少なくしていたのだ。その悪い母は私。・・・いやいや、だけど、ほら、家庭の平安って大事だと思うの。そしてその核になるのは夫婦の仲良さだと思うわけであるからしてぐだぐだぐだ。

 許してねん、さーちゃん。

 そんな母の企みが効いたか、風呂上りの全身ピンク色した桜は湯冷ましを飲んだらアッサリと夢の中へいってしまったのだ。

 私は娘を寝室のベッドへ寝かせて、その柔らかい髪の毛に指を通す。

 すやすやと眠る、この子。間違いなく愛の結晶なのだ(すんげー照れるんですけど!)

「母さん頑張るわ」

 そっと呟く。娘は全然聞いちゃいないようだったけど。


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